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ぞろっぺい

丸谷才一さんが文化勲章を受章した。
まことに喜ばしいかぎりだが
わたしは丸谷さんの小説は一冊も読んでいない。
しかし『文章読本』は枕頭の愛読書である。

たて書きで読みにくいが
有名な『伊勢・九』のみやこどりのくだり…
ise
なほ行き行きて、武蔵の国と下つ総の国との中にいと大きなる川あり。
それをすみだ川と言ふ。その川のほとりに群れ居て、思ひやれば、
限りなく遠くも来にけるかな、とわびあへる、渡し守、
「はや舟に乗れ、日も暮れぬ。」と言ふ
乗りて渡らむとする、みな人ものわびしくて、京に思ふ人なきにしもあらず。
さる折しも、白き鳥の、嘴と脚と赤き、鴫の大きさなる、水の上に遊びつつ魚を食ふ。
京には見えぬ鳥なれば、みな人見知らず。渡し守に問ひければ、
「これなむ都鳥。」と言ふを聞きて、

 名にし負はば  いざ言問はむ都鳥わが思ふ人はありやなしやと

と詠めりければ、舟こぞりて泣きにけり

…なぜ、ここで「に」ばかりを大きく書いたのか?
それは丸谷先生が次のように書いているからで…。
「日本語の文章について考へようとするとき
わたしはよくこのくだりを思ひ出す。
思ひ出して当惑する。
「はや舟に乗れ、日も暮れぬ」と言ふ
乗りて渡らむとする
と「に」を三回もくりかへして平気でゐる。
なにかずるずるとしどけない感じが、ひどく困るのだ。
…(中略)…
第一流の古典の最も有名なところ、
日本文学のサハリの箇所を十選べばきっとはいる、
しかもかなり上位にはいる、あの都鳥のくだり、
たいていの人が感嘆せずにはゐられない急所のところで、
こんなぞろつぺえな書き方がしてあるという事実は、
日本語の文章全体にかかはることのやうに思はれてならないのだ。
…(後略)…     中公文庫『文章読本』344頁

まさに丸谷流が横溢した論調であるが、
日本人の性格論にも通ずる卓見である。
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 …漢字では「唯一無二」…これを横文字では ” yuiits " と略す
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